要件は4つ。日本語精度、外部AI連携(1日1回の自動同期でよい)、常時稼働、丸一日のバッテリー。
4要件を全部きれいに満たす製品は、2026年8月時点で存在しない。 市場が「常時録音型(海外発・日本語が弱い・APIはある)」と「手動録音型(日本製・日本語が強い・APIがない)」に二分されていて、この2つが今のところ排他になっている。
そのうえで、曲がりなりにも4つ全部に指がかかっているのは Omi Pendant の1機種だけ。これを本命に推す。日本語精度が唯一の弱点だが、Omiはハード・ファーム・アプリ・バックエンドが全部MITのオープンソースで、バックエンドは日本語最強STTの Soniox を選べる構成になっている。つまり精度が足りなければ自分で殴れる、という逃げ道がある製品はこれしかない。
前提の訂正が1つ。 基準にされていた Fieldy は、公式デバイスガイドを読む限り常時録音ではない。 アプリで「Start Transcribing/End Transcribing」を押す手動起動で、1会話あたり最大3時間で自動停止する。要件3を満たさないので、Fieldy 自体は候補から外れる。
Omi(Based Hardware・米)。公式$179、10.8g。ペンダント/クリップ。電源を入れている間ずっと録る。ファーム3.0.7で24時間つけっぱなしにして100%→30%程度、毎晩充電する運用で回る。無料枠は文字起こし月1,200分、Unlimitedが$19/月・$199.99/年。日本発送あり(送料$50〜60、2025年12月時点で総額22,500円前後の報告)。ハード・ファーム・アプリ・バックエンドが全部オープンソース。Developer API、公式MCPサーバー、リアルタイム文字起こし/メモリ生成/生音声バイトの3種のwebhookを持つ。レビュー記事に頻出する$89は2025年時点ないし開発版の価格で、現行SKUの価格ではない。在庫あり(2026-08-08確認)。
Omi Dev Kit 2($69.99〜$89)。8GBストレージ・スピーカー・物理ボタン付きの開発版。ただし150mAhで連続10〜14時間。バッテリー要件を満たさないので、買うならDev Kitではなく通常のPendantを選ぶこと。 なお公式ストアの商品一覧からは消えており、現在購入できるのは Firmware Developer Kit($59.99)と Glass Dev Kit($499)で、Dev Kit 2 そのものは事実上入手できない。
Bee Pioneer(Amazon傘下・米)。$49.99、最大160時間(実測は常時稼働で1.5〜2日)。40言語。音声は文字起こし後に破棄しテキストだけ残す設計。サブスク実質不要(Premium $12/月は任意)。Claude Code連携だけを見れば全機種中ぶっちぎりで最強(後述)。ただし米国内発送のみ、アプリはiPhone専用かつ全編英語。
SwitchBot AIマインドクリップ(日本流通あり)。18g・64GB、30言語以上(日本語含む)、オンデバイスAI処理、日常装着前提の自動録音。最大20時間連続録音(アプリ同期時14時間)・待機40日。無料枠は文字起こし月300分。ヤマダウェブコムで税込22,200円のフライング予約が出た(2026-08-07・その後削除)が、2026年8月時点で一般販売はまだ始まっていない。 エクスポートはMP3/WAV/TXT/PDF/Word、カレンダー連携あり、APIの記載なし。
Friend($99)。常時稼働だがAIコンパニオン(話し相手)であって記録・生産性の道具ではない。用途が違う。
Limitless Pendant(約$99・約100時間)。カテゴリ最良の完成度だったが、2025年12月5日のMeta買収と同時に販売終了。 既存ユーザーは最低1年サポート+Unlimited無償化。EU・英国・中国・韓国・ブラジル・イスラエル・トルコではサービス自体を停止した。新規購入は不可。
Fieldy 3(旧Compass AI・$129〜)。25g、最大7日、100言語以上(日本語含む)、音声は保存せずテキストのみ。手動起動、1会話3時間上限、端末内に最大3日分保持。API/エクスポートの記載なし。
Humane AI Pin。2025年2月28日にサービス終了、動作しない。
いずれも「ボタンを押して録音開始」で、一日中回しっぱなしにする設計ではない。ただし日本語精度と国内サポートは常時録音型より明確に上。
| 製品 | 価格 | 連続録音 | 形態 |
|---|---|---|---|
| PLAUD NotePin S | 28,600円 | 20時間 | 17.4g・首かけ可 |
| PLAUD Note Pro | 実売2〜3万円 | ー | カード型・通話対応 |
| Anker Soundcore Work | 26,990円 | 8時間 | 10g・ケースで32時間 |
| GLIDiC AI +u Buds | 29,800円 | 20時間 | イヤホン+レコーダー |
| Notta Memo | ー | ー | 18g・骨伝導マイク |
| AutoMemo S / R | ー | ー | ソースネクスト製 |
| Mobvoi TicNote | 約$150 | ー | 64GB・101言語 |
PLAUDはZapier連携(トリガーのみ・公開APIはベータ扱い)があるので、手動型のなかでは唯一「文字起こし完了→webhook→自分の処理」が組める。AnkerはGPT-5.2で150言語・話者識別だが外部連携の口はない。
指輪の Sandbar Stream($249/$299・2026年夏出荷)はタッチパッドを押している間だけ録る設計で、常時録音ではない。スマートグラスは Even G2(本体99,800円+R1リング41,800円)が会話の文字起こしを空中表示、Halliday G2 は会議向けだが2026年7月時点で表示・アプリが英語のみ・日本発送なし。Brilliant Labs Halo は出荷が繰り返し遅延中。
| 製品 | 常時録音 | 実バッテリー | 日本語 | 外部AI |
|---|---|---|---|---|
| Omi Pendant | ○ | 約24時間 | △ | ◎ |
| Bee | ○ | 1.5〜2日 | × | ◎ |
| SwitchBot | ○ | 最大20時間 | ○ | × |
| Fieldy 3 | × | 最大7日 | △ | × |
| PLAUD NotePin S | × | 20時間 | ◎ | △ |
| Anker Work | × | 8時間 | ◎ | × |
| Limitless | ○ | 約100時間 | △ | 販売終了 |
残るのは Omi と Bee の2つ。SwitchBotはAPIがなく未発売、日本製の手動型は全部が要件3で落ちる。
4要件のうち3つ(常時録音・バッテリー・外部AI連携)を素で満たし、残る日本語だけが△。そしてその△を自力で潰せる構造を持っている唯一の製品、というのが推す理由。
外部AI連携は要件を大幅に上回る。Developer API は GET https://api.omi.me/v1/dev/user/conversations に Bearer 認証(omi_dev_ キー)で、start_date / end_date / include_transcript を指定してフル文字起こしにアクセスできる。 レート制限は100リクエスト/分・10,000リクエスト/日で、1日1回の同期には桁違いの余裕がある。公式MCPサーバーもホスト版(https://api.omi.me/v1/mcp/sse)があり、Claude Code から get_conversations / get_conversation_by_id / get_memories を直接叩ける。加えてリアルタイム文字起こし・メモリ生成・生音声バイトの3種のwebhookが用意されている。
日本語の実態は正直に書く。アプリ上の会話要約は日本語で出て概ね問題ないが、興味関心を蓄積する「メモリ」機能は日本語未対応で英語のまま記録される。 STTプロバイダは現在サーバー側固定(Modulate Velma-2 と Parakeet、ホスト版Deepgramは無効化済み)で、通常ユーザーは選べない。日本語は対応言語に含まれるが特別扱いはされていない。
日本語が実用に足りなかった時の逃げ道が、この製品を選ぶ最大の理由。 Omiのバックエンドは Python/FastAPI でMITライセンス、Deepgram・Speechmatics・Soniox に対応している。Sonioxは独立ベンチマークで日本語WER 8.7%、Deepgram・ElevenLabs・OpenAI・Google・Azure・AWS を含む8社を上回って1位。関東・関西・東北・九州の方言も学習済み。つまりセルフホストすれば「日本語最強STT × 常時録音 × 自前リポジトリ直結」が成立する。
実際にBLE音声ストリームをローカルのFastAPIに流してオフラインWhisperに繋ぎ、クラウドを完全にバイパスした事例も、FastAPI webhookで生の文字起こしを受けてDuckDBに貯めサブスク制限ごと回避した日本人ユーザーの事例もある。ただしこれは相応の工事で、時間を確実に食う。まず素のOmiで2週間実測し、精度が足りなければこの道に進む、という順番を勧める。
Beeには公式CLIがある。npm install -g @beeai/cli して bee login、bee sync を叩くと bee-sync/ ディレクトリに会話・facts・todos が全部Markdownで吐き出される。Full Sync と Realtime Sync があり、自動Full Syncのセットアップも用意されている。さらに bee proxy でローカルHTTP APIが立ち、MCP対応もあり、Claude/Claude Code/Codex をワンコマンドで自分のBeeコンテキストに接続できる。 「勝手にリポジトリに記録が同期され、Claude Codeからアクセスできると理想」を、そのまま製品機能として持っているのはBeeだけ。しかも$49.99でサブスク実質不要。
それでも本命にできないのは、要件の第一に挙がっている日本語で落ちるから。1ヶ月使用した日本人ユーザーのログでは、文字変換レベルの精度はかなり低く、生成AIの推測で意味を補っている状態。音声を保存しない設計なので後から原文を確認できず、細部の誤りが検証できない。アプリはiPhone専用・全編英語で、要約を読むにもAIチャットで日本語訳を頼むワンクッションが要る。加えて米国内発送のみで、転送サービス経由の調達になる。
日本市場向け・常時装着前提・20時間・22,200円前後という、要件1と3と4を素直に満たしうる唯一の国内流通機。ただしAPIの記載がなく要件2を満たさない見込みで、そもそも2026年8月時点で一般販売前。ウォッチリストに入れておいて、発売後にエクスポート仕様を確認する。
Fieldy・PLAUD全機種・Anker・GLIDiC・Notta・AutoMemo は手動録音なので要件3で失格。Limitlessは販売終了。Friendは用途違い。
二段構えにする。永続記録はAPIポーリング、その場の照会はMCP。
日次同期は実装済み(tools/omi-sync/)。1日1回のcronからスクリプトを走らせ、GET /v1/dev/user/conversations を Bearer 認証で叩き、日付ごとのMarkdownを life/daily-log/omi/YYYY-MM-DD.md に書き出して --commit でpushする。レート制限には全く触れない。hubのStopフックは全変更を自動pushするが、cron起動はセッション外なのでスクリプト側にpushを持たせてある。ただしデバイス未着・APIキー未発行のため実機未検証。
同期を待たずに引きたいときのために、公式MCP(https://api.omi.me/v1/mcp/sse)をClaude Codeに繋いでおく。こちらはファイルに残らないので、日次同期の代替にはならない。
APIキーは絶対にリポジトリに置かない。 hubのStopフックが全変更を自動pushする以上、キーは .gitignore 済みの場所か環境変数に置く。
記録の中身をどこに置くか。 常時録音の記録には、鈴木さんとの原田メソッド定例、家族との会話、外出先で拾った第三者の会話が全部混ざる。hubは全変更が自動pushされるリポジトリなので、生の文字起こしをそのまま置くかは設計判断が要る。日次同期の対象を絞る(要約だけ入れる/life/private/ 相当の扱いにする)ことを先に決めておいたほうがいい。
第三者の会話。 自分が当事者の会話を記録することと、自分が入っていない他人の会話を拾うことは別問題。Beeのユーザーが電車内で近くの乗客の会話を意図せず記録していた実例が報告されている。取引先との打合せは、後で共有する前提なら一言告げるのが無難。これは法的助言ではないので、業務利用を本格化するなら別途確認すること。
技適。 OmiもBeeもBLE機器だが、日本の技適取得状況を今回の調査では確認できなかった。購入前に要確認。
在庫。 解決。公式・Amazon.co.jpとも在庫あり(下記)。
公式 omi.me は在庫あり。 $179(Silver)。商品ページの構造化データは InStock、Shopifyの在庫フラグも available: true。ページの見た目は「Sold out」に読める箇所があるが、在庫データ上は買える状態。送料は過去の購入報告で$50〜60。
Amazon.co.jp にも1件だけ出品がある。 ¥32,800、出品者は「AI Collectors」、日本語マニュアルと導入サポート付き、無料配送で8月19日着。為替次第だが公式($179+送料)とおおむね同等か、やや安い。ただし正規代理店ではない転売系の出品で、メーカー保証と技適の扱いは未確認。
判断としては、サポートと納期の読みやすさを取るなら Amazon.co.jp、保証と正規ルートを取るなら公式。購入そのものはAtsukiの判断なのでこちらでは実行していない。
日本語精度の実測(デバイス待ち)。 入手できたら2週間、実際の商談と鈴木さんとの定例で測る。ここが分水嶺で、実用に足りるならそのまま日次同期を回し、足りないならSoniox構成のセルフホストに進む。
同期スクリプトは実装済み。 tools/omi-sync/ にある。実機到着後、まず --dry-run でレスポンス形状を確認してから本番投入する。
生ログの置き場を決める。 未決。詳細は omi-sync の README 末尾に書いた。
Amazon.co.jp出品(AI Collectors)の正規性・保証・技適。Omi・Beeの技適取得状況。SwitchBot AIマインドクリップの正式価格・発売日・エクスポート仕様・API有無。Fieldyのエクスポート手段(FAQ・デバイスガイドのいずれにも記載がなかった)。Omiの日本語STTが実際にどの程度使えるか(実機検証待ち)。GET /v1/dev/user/conversations の戻りが配列か {"conversations": [...]} か(スクリプトは両対応にしてあるが実機で確定させる)。